今日は春分です。
この日を境に自然界の陰陽が転化します。
陰がピークを迎える12月の冬至から、
地下では陽が芽を出し成長し始め、
2月の立春を境に陽が陰の成長を上回り、
春分の日に陰陽の逆転現象が起こり、
ここから夏至まで陽が旺盛な時期となります。
もしかしたらその種がここから、
成長してくるタイミングとなるかもしれません。
さて、
この陰陽の逆転や転化は、
わたし達人間の身体にも起こります。
わたし達も、自然界に生かされている自然界に存在する物質に過ぎないので、
自然の摂理に則って、
誕生して
旺盛や衰退という変化をしながら
いずれ死を迎えるようになっています。
中医学では人間の身体は
30歳前後に陰陽バランスが最も良い状態となると考えられているようです。
この時期を過ぎると、陰陽の働きは少しずつ陰気が主導する方向に向かい、体力、勢力が衰退していく。
陰と陽は「量の変化」から「質の変化」に変わるとされています。
「量の変化」から「質の変化」に変わる
とありますが、
これはどういうことかと自分なりに解釈すると、
量の陰陽とはシンプルに
活力やエネルギー、細胞分裂のスピード、神経回路伝達のスピードなど
「成長へと促すものの強弱」を指し、
質の陰陽とは
「既に一定のピークを迎えた状態であるものの機能向上や維持、衰退」を指す
のかな?
と思っています。
記憶力、視力や聴力、骨や筋肉、内臓機能などは、
ある程度年齢がいくと「質」としての変化として捉えられるように思います。
成長のピークを過ぎれば、身体は衰退に向かいますが、
わたし達は30歳を切り替えとして、
質を意識しなければいけなくなるということです。
衰退へ向かうことは自然の摂理として避けられませんが、
陰陽の質を動かしバランスを整えていくことで、
長く健康を保つことができるということでしょう。
中国最古の医学書とされている『黄帝内経・素問』に、以下のようなことが書かれています。
”女子七才の時、腎気が旺盛になり、歯が入れ替わり、髪の毛が伸びる。
十四才でホルモンのようなもの〈天癸・てんき〉が分泌され、経路の通りがよく、生理が順調に行き、妊娠できるようになる。
二十一才で腎気の発育がよく、親知らずが生え、髪の毛が長くなる。
二十八才の時、筋肉・骨が丈夫に、髪の毛がさらに長くなり、体も最も強壮な状態になる。
三十五才で顔に分布している陽明経路が衰えはじめ、顔の皮膚の艶が少なくなり、髪の毛が落ちはじめる。
四十二才で太陽・少陽・陽明の三つの経路の流れが衰弱し顔の皮膚が老け、白髪が生えはじめる。
四十九才で天癸の分泌は無くなり、月経が止まり、体型が崩れ、妊娠もできなくなる。”
私はこれを読んだ時に恐ろしくなりました。
紀元前200年頃(前漢)から220年(後漢)頃に書かれたものとのことですが、
現代の女性のホルモン変化、身体の変化と大差ないと思ったためです。
髪の毛の長さは、栄養がいきわたっているという表現だと思いますし、
これら身体の変化は、
今も昔もなかなか変えることの出来ない自然の流れなのだと、
改めて成長して衰えるということを理解しました。
女性はいつまでも女性でいたいと思う生き物です。
99歳の女性のご入居者様が首に巻いているスカーフを
「とってもお似合いで素敵ですよ」と褒めたら、
笑顔で恥ずかしがりとても喜ばれていました。
99歳の女性のその姿は、
全ての女性の心理を集約したものに思えました。
今ちょうど、桜が咲いて美しいです。
季節ごとに暮らしを彩ってくれる草花は、
芽吹いて、芽を伸ばし、葉を茂らせ、蕾を膨らませ、美しい花を咲かせます。
わたし達はその過程を楽しんだり、
美しく咲きほこった姿に感動します。
そして美しく咲いた後も、
それを惜しむかのように、
花びらを散らせ地面を花びら色に染めてくれます。
わたし達はその花の美しさを最後まで味わうことができます。
美しい花は、
移ろいゆくからまた美しいと思いませんか?
移ろいゆく変化があるから楽しむことができると思いませんか?
姿形が永遠ではないから、
その瞬間が愛おしく、儚く、美しいのです。
わたし達はピークを迎えた後、
衰退していくことは避けられませんが、
陰陽の質を動かしバランスを整えていくことで、
長く健康を保ち、
散りゆく花びらを舞い上げることも、
花びらを舞い上げた後に踊らせることだって、
きっとできるのです。
永遠ではないから懸命に自分らしく美しく生きたいと思う。
そんな気持もきっと陰陽の質に含まれるのでしょう。