2025年の構築を目指す「地域包括ケアシステム」への期待と不安。

需要があると見込んで、

様々な会社が介護事業に乗り出していますが、

この先、事業の存続は難しいのではないかなと思っています。

 

介護の事業形態も様々なので、

デイサービスや通所リハビリといった

「通所」スタイルなら

競合は凄そうですが

同業に打ち勝つだけのアピールがあれば、

まだやっていけるのかなと思いますが、

 

有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者住宅といった

「ホーム」はかなり難しくなってくるのではないかと思っています。

 

社会福祉法人である特別養護老人ホームも、危なっかしいです。

社会福祉法人は潰れることはないと言われていますが、

そんなことはありません。

 

私はこれまで3箇所の特別養護老人ホームで勤務してきましたが、

3箇所とも赤字経営でした。

潰れるような経営危機に陥った場合は、

やはり「法人を買い取ってほしい」とお願いすることになるようです。

 

どこが買い取るにしても、

入居している方の生活が守られるのならそれで良いとは思っています。

 

ホームは生活の場です。

有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者住宅では、

排泄介助、入浴介助、食事介助など

介護する人がいなければ、基本的な生活が成り立たちません。

 

日中だけ、短時間だけ高齢者をお預かりするサービスとの違いはここです。

 

ホームは365日、

盆暮れ関係なく1日中ずっと付き添っていかなければならず、

それだけ、労力が必要で、働き手が必要だということになります。

 

介護する人材の確保は、

今後さらに厳しくなっていくでしょうし、

外国人技能実習生も、そうすぐには教育・育成できません。

 

私が今勤務している特別養護老人ホームは、

地域で最も古く歴史のある施設ですが、

それでも、

介護職員が慢性的に不足しています。

 

経営のためには空部屋にさせられないけど、

疲弊した介護職員さんからの「待った!」の圧力で、

新規のご入居者様を入れられない状況が生じています。

 

このような背景を問題に、

厚生労働省は、

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を目処に、

「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。

 

(画像引用:とやま地域包括ケアシステム)

 

「地域包括ケアシステム」を簡単に説明すると、

「要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように地域内で助け合う体制」のことす。

 

市町村が主体となり、

「それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供できるような取り組み」を実現できるよう目指しています。

 

この「地域包括ケアシステム」が実は何を意味するのかというと、

 

「病院も施設もどこもマンパワー不足ですから、在宅という場を拠点にしてくださいね」

 

という言葉で表現できると思っています。

 

少子化で、どこもかしこも働く人が足りないところ、

加速度を上げる高齢化で、脆弱化した人が増えれば、

病院も介護施設もモチロン人が足りないのに、

それを求める人が増加してパンクしてしまいます。

 

少子高齢化という時代背景とともに

従来のあり方では対応できず、

医療・福祉が転換期を迎えることになり、

これから高齢者となる方の長期的な自立の促しがより一層進むと捉えています。

 

長期的な自立とは、

できるだけ病院や施設のお世話にならない、

長期にわたって要介護にならないような

「予防策の強化」にあたります。

 

少子高齢化の救済措置として進められている

「地域包括ケアシステム」ですが、

システムとして機能して循環していくまでには、

随分時間がかかるような気がします。

 

そもそも、在宅で介護といっても、

施設なんて比べ物にならないくらい

訪問介護現場は人材不足のうえ、

現場職員の高齢化で崩壊寸前です。

 

高齢者の生活を1番支えるのは

医療ではなく介護なのに、

「要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けること」なんて、 

目指せるのか正直不思議です。

 

この現実をきちんと見た上で、

厚生労働省が「地域包括ケアシステム」を進めていくのなら、

市町村に丸投げしている印象が否めないのですが・・・。

今後、訪問介護現場の問題も浮き彫りになってくるとは思っています。

 

いずれにしても、

病院や施設に高齢者が集中しないよう、

需要を分散させなければいけないとは思うので、

医療や福祉の在り方は変わっていくと思っています。

 

何かをスタートさせて、それが稼働するまでには

時間がかかるのは当たり前なので、

問題を修正しながら

新しい医療や介護のシステムを構築してもらいたいなと思っています。

 

「地域包括ケアシステム」のスタートを前に、

在宅サービスも増えているなと感じています。

 

訪問診療、訪問看護、訪問歯科、訪問介護、訪問リハビリ、訪問マッサージ、訪問理容、配食サービスなどなど

リモート診療受診後は

薬も届けてもらえるようになりました。

 

コロナウイルス感染症の恩恵として、

「家でできること」「家でしてもらえること」の幅が広がり、

在宅の可能性を広げてくれた実感を、多くの方が持たれたと思っています。

 

 

これからの高齢者は

多くの人がスマホもパソコンも操作できるので、

リモートで安否確認や健康調査などが可能になりそうですね。

 

いかに少人数の人材で、

多くの高齢者をさばけるかが

課題になるのでしょう。